ヨコハマ劇的空間ツアーvol.2 レポート

2007年7月7日

急な坂フィールドワーク「ヨコハマ劇的空間ツアー」は、ヨコハマならではの「劇的空間」を1日がかりで知り尽くす超効率的なツアーです。
今回のレポートアーティストは、青木祐輔(空間アート協会ひかり/美術・宣伝美術)に同行していただきました。「山手洋館スペシャルツアー」の洋館をはじめ、ランドマークホールや横浜赤レンガ倉庫1号館といった劇場空間。もちろんSTスポットにのげシャーレの舞台裏。2009年オープン予定の県立新ホールについても解説していただきました。
それでは、レポートアーティストの率直な感想をお届けします。

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【 今回のレポートアーティスト 】青木祐輔(空間アート協会ひかり/美術・宣伝美術)
ツアー前のメッセージより


レポートアーティストからのメッセージ今回のツアーでは、古きよき時代の歴史的建造物に、如何なる劇空間を見いだせるか楽しみです。また近代的な設備を備える劇空間を、さらに新たな視点で捕らえ直し、何か再発見出来ればと思います。「古い物と新しい物が調和する街、横浜」まさしくそんな時間と空間をつなぐツアーになればと思います。
2007年8月7日(火)

13:00- STスポット
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空間アート協会ひかりはちょうど一ヶ月前こちらで公演を行いました。実際に使用した感じでは、コンパクトで扱いやすいと思いました。意外と天井が(照明バトンから上)が高いのでそこをいかすと空間に不思議な広がりが生まれます。公演ではそのコンパクトさゆえ観客は役者の息遣いまでもリアルに感じ
られ、小劇場の醍醐味である舞台と客席との一体感を存分に味わえると思います。
また、備品等も必要十分そろっていますし、劇場スタッフの方々も大変協力的で常に作品作りを優先する姿勢を感じました。

横浜駅よりJRで石川町駅へ


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石川町でJRを下車、駅構内階段を下り改札へ、すでにレトロな雰囲気が漂って来ます、階段踊り場の窓のサッシは鉄製で少しアールデコの雰囲気を感じさせます、改札を抜けるとそこにはなぜかステンドグラスがあります。すでに少しずつ時間軸に変化が現れているようです。駅を出るとすぐに急な上り坂、時間を遡るように登って行きます、そしてしばらく行くと小さな門をくぐり径を上がり庭園へ、幾何学的な庭園です。庭園の片側は崖になっておりその向こうには横浜の街を一望する眺めになっています。夜景がとっても素敵そうです。反対側を見上げると目的の洋館「外交官の家」が立っています。

14:00- 外交官の家


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早速中へ入ります。意外とこじんまりとした印象です、すべての柱や梁、床等手入れが行き届いておりピカピカの状態です。当時のものと思われる厚みにむらのあるガラス通して見えるランドマークタワーなどの近代的景色と洋館のコントラストが両者の間の時間の厚みを感じさせます。舞台空間としてはその厚みをいかにうまく利用できるかが問題です。うっかりすると洋館のもつ力に負けてしまいそうです。床の感じ(鳴り)やドアの間口や窓の大きさなどスタジオの様な均質な空間との違い、身体とそれらの距離感などの関係から何か新しい表現の可能性を感じます。

14:30- ベーリック・ホール


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山手の尾根道を歩きベーリック・ホールへ
ベーリック・ホールはスパニッシュスタイルを基本にして作られているそうです。上部にアーチ型のデザインを持つ解放的な大きな窓もその特徴の一つです。ベーリック・ホールの名の由来でもあるホールのような大きなリビングルーム。片側には大きく床まで開く窓を挟み広々とした庭が広がり反対には窓に囲まれたサンルームのようなパームルームがあり明るく開放的な空間となっています。リサイタルやダンス公演なども幾度か催されているとのことです。

15:00- 岩崎博物館「山手ゲーテ座」


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そして外人墓地や山下町を左手に臨みながら岩崎博物館「山手ゲーテ座」へ
日本最初の西洋式劇場「ゲーテ座」を記念してつくられたホールです。天井、壁面と内装は全て木製、可動客席100席の小規模な落ち着いた雰囲気です。現代と古き良き横浜の面影がちょうど交差しているような印象を受けました。ステージは客席との距離間を大事にし高さ21cmと低く抑えられています。どちらかと言えば音楽向きのホールですが客席を自由にアレンジ出来るようですので、使い方次第では客席と一体感のある面白い空間を演出できるのではないでしょうか。劇場の上の階はファッション・ミュージアムとギャラリーとなっています。

16:10- 横浜赤レンガ倉庫1号館


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レトロ調の観光スポット周遊バス「あかいくつ」号に乗って移動です。
ダンス公演や写真展などで何度か足を運んだことのあるホールです。ホールは3Fになります。古い扉や屋根の梁などの倉庫時代の歴史遺産を上手に残しつつ現代的でシンプルなリノベーションを施された空間は、まさしく現代と古き良き横浜が融合したスタイリッシュな空間です。約114坪の広いフロアはステージの設定から客席の設定まで全て自由に行えまた天井だかも約5mと高く大変自由度の高いホールです。またホワイエ、楽屋などの付帯施設も大変充実しています。駅からのアクセスは若干距離はありますがロケーション的には横浜港を間近に望み申し分ないと思います。
2Fは3つに仕切られたギャラリースペースのような空間ですパフォーマンス等の催しも開催出来るとのことです。

16:40- 県立新ホールに関する説明(神奈川県県民部文化課より)


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メインのホールについてはともかく大変立派なホールです。オペラから歌舞伎まで十分にこなせる大きなホールです。付帯施設の大中小と4つ(小は2つらしいので)のスタジオは稽古場としてだけではなく、そこでの公演も可能とのことで大変気になりました。また運営方針等を伺い横浜(神奈川県)の文化創造・発信にかける意気込みを感じることが出来ました。芸術監督について話が及びましたが今のところまだ決定していないとの事でした。誰になるのか興味津々です。

17:30- ランドマークホール


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ホテルの様なエントランス、広々としたホワイエ(ここで十分公演が出来そうです。しかも絨毯ふかふか、、
分割昇降可能なステージ、昇降ライトキューブ、自由に配置できる可動客席、さすが充実の設備です。駅からのアクセスもよく申し分ないホールです。

ランドマークの足下のドックヤードガーデンに立ち寄りました。
ドックヤードガーデンはその名の通りかつては船のドックだったものを文化遺産として遺した物で、石造りのギリシャの遺跡を感じさせる様な空間です。舞台公演なども催された事もあるとの事です。ビル風が強くセット等を立て込むのは大変そうです。
だいぶ日も傾いて来ました、ランドマークを後に桜木町の駅をくぐり、のげシャーレへとやや急ぎます。

18:15- のげシャーレ(横浜にぎわい座)


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のげシャーレは横浜にぎわい座の地下にあります。自由な舞台空間を作り出せる215平米のプレーンな空間です。140席の収納可能な可動客席、大道芸等の公演・稽古等も出来る様に約5mとたっぷりの
天井高、とても明るくきれいな楽屋、水場や工作台を備えた制作室、エレベータからつながる広めのホワイエと充実の施設です、しかも使用料も比較的低く抑えられ非常に魅力的なホールです。
(と言うことで空間アート協会ひかりでも10月にこちらで公演を行いました。)
のげシャーレの、シャーレとは実験道具のシャーレから取った名前だそうです。文字通り実験的なお芝居作りやそれを育てて行こうと言う姿勢が劇場スタッフの方たちからも感じられました。

19:00- 急な坂スタジオ


文字通り急な坂を登り急な坂スタジオへ、今回のフィールドワークもいよいよ最終目的地に到着です。
「空間アート協会ひかり(仲田恭子)」は、レジテンスアーティストとしてすかっかりお世話になっている稽古場・創造的空間スタジオです。スタジオの機能はもちろんのこと芸術・文化の想像・交流・発信基地としてのソフトウェア的機能(スタジオ企画事業・このフィールドワークやワークショップ・レクチャー等)に大変興味もつと同時に期待をしています。
山手の洋館・古き良き横浜から、赤レンガ倉庫やランドマークなどの現在、そして野毛シャーレや急な坂スタジオと言った未来へと時間と空間を見事に一日で巡れ感じる事が出来ました。このツアーで感じた様々な事がこれからの自分の舞台制作の中でどのように反映されていくのかが楽しみです。
最後に、今回この様な機会を与えて頂いた、急な坂スタジオのスタッフの皆さんに感謝の言葉を添えレポート結ばさせていただきます。ありがとうございました。