7月11日、「坂あがり相談室plus」の一人目の対象者のRie Tashiroさんによる、20日間のクリエイションを経た発表会を開催しました。発表会後には、ご来場いただいたお客様にも一緒にフィードバックにご参加いただき、充実した時間になりました。
ご来場いただきました皆さま、ありがとうございました。
「坂あがり相談室plus」について、今回の発表会の写真とTashiroさんのレポート、急な坂スタジオディレクターの加藤のコメントを交えてご紹介します。
急な坂スタジオでの創作を通じて
他者から刺激を受ける環境で創作することで自身の作品のカラーをより強くしていきたい。そう思ったのがこの企画に応募した理由です。他者との共同制作や意見交換は自身の固定された考えに変化をもたらしたり、逆に揺らがない部分を再確認できたりと、ソロ作品が多かった私にとって、多くの刺激になると考えました。また以前からソロと並行してダンサーやダンス以外の様々なアーティストを集め創作活動を立ち上げたいと考えていたため、色んな局面で相談ができたりチャレンジができそうなこの企画に応募しました。
今回は音楽家の山口紘さんとダンサーのibisさんにお願いをして共に共同制作を行いました。
制作の期間は20日間弱でしたがとても濃い時間が過ごせました。ソロ作品を作る際はダンスの動きそのものに重きをおいた創作をしていましたが、今回は作品の発想や展開の仕方、意味についてとにかく話し合いを行いました。作品のイメージや考えを他者に伝えるために改めて言葉にすることがとても難しく苦労しました。今まで言葉で考えず身体化していくことはとても大事だと考えていますが、一度客観的に言葉の枠に落とし込むことによって、その意味を強くできたり、逆に言葉に引っ張られ過ぎたりと、作品を一度色んな方向に寄せては壊し、再構築を重ねていくことによって、作品に色んな可能性があるんだと改めて気づくことができました。共同制作を行いながらその実験や訓練ができたことが自分の中ではとてもよい経験となりました。
また他者と共同制作をすることは、自分では考えつかないことや想像もしなかったアイデアをもたらしてくれました。もちろん創作のスピードや作品に対する考え方が異なるため、それをまとめていくのは困難ではありましたがその大変さを上回る発見もありました。そして急な坂スタジオでも運営の方やレジデントアーティストの方から作品の感想や公演する上でのアドバイスをもらったりなど、いろんな角度から作品を考えることがができ、一人ではできなかったものを創作することができました。
まだまだ作品といえるものには仕上がっていませんが、これからもこの作品にもっと時間を割いて作品を通して伝えていきたいことをクリアにしたいと考えています。
短い期間ではありましたが、このような機会をくださったスタジオの方や制作を共にしてくれたアーティストの方々に感謝をします。
本当にありがとうございました。
Rie Tashiro
「坂あがり相談室plus」のまとめ
【修行】という言葉をタシロさんが使ったとき「やった!」と思いました。本人は思い詰めた、疲れた、あんまり良く眠れていないような顔で、最初の1週間がとてもツライ時間だったことを語っていました。でもその時間こそが、相談室plusで実感・体感してもらいたいことでした。
作品を生み出すことは、しんどいし、エネルギーも時間も消費します。でも彼女は【公演】というゴールを目指すのではなく、もやもやした自分自身との戦いとして、創作に向き合っていました。だからこそ【修行】という言葉が出たのでしょう。発表するためには、考えたり、整えたり、もしかしたら、ちょっと妥協したりすることもあるでしょう。でもこの20日間は、ただただまっすぐ、作品を創ることだけに集中出来たのではないでしょうか?
6月末、急な坂のスタッフやレジデント、サポートアーティストの見守る中、小さな発表をしました。タシロさん以上に、見る側も緊張していました。それは「いま、この瞬間に何かが生まれようとしている」というヒリヒリした心地よい緊張でした。発表の後、床にぺたんと腰を下ろして、様々なアーティストや制作者が、ざっくばらんに話し合いました。答えを見つける為ではなく、創作活動を続けて行く為に大切なことを考えた時間でした。
相談室plusを終えた後のタシロさんは、とてもスッキリした表情をしていました。そして「この先に何をして行きたいのか。どんなものを創りたいのか。」を力強く語れるようになっていました。20日間というごくごく短い時間の中で、考え・悩み・創り続けた成果でしょう。ほんのちょっと、自分に自信を持って、続ける勇気を手に入れたように見えました。
あの日、スタジオで生まれた小さな作品を今後も大切に育て、【公演】として皆様にご覧いただける日を心待ちにしています。
急な坂スタジオ ディレクター 加藤弓奈
「坂あがり相談室plus」は発表会で終わりではなく、今回の約20日間のクリエイションでできた種を、どうしたら公演にできるか?会場は?スタッフは?ということを考えることも、大事なポイントです。今後、Tashiroさんとは次のステップのことを一緒に考えられればと思います。
今回の発表会が、どんな風にふくらみ・広がっていくのか、HPなどでご報告できればと思いますので、一緒に見守っていただければ幸いです。
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写真:須藤崇規
参考URL:
★坂あがり相談室plus募集開始
★坂あがり相談室plus対象者決定のお知らせ
★「坂あがり相談室plus」の発表会