『わたしたちは生きて、塵』参加アーティスト特別対談①酒井幸菜×西井夕紀子(音楽)

Dust as we are, still alive参加者プロフィール

西井夕紀子

Yukiko Nishiiもび http://mobi.moo.jp/new/
FALSETTOS http://www.myspace.com/falsettosjapan

酒井幸菜(振付家・ダンサー)

Yukina Sakaisakaiyukina official website http://www.sakaiyukina.net/

Topic-1 【出会い】まずは、お二人の出会いをうかがいました。
taidan_nishiiTopic-2 『もび』の活動と口を開けない酒井幸菜
taidan_nishiiもび こどものための、もちはこびパフォーマンス『ダンスたんすタンツェパンツ―ことばをおどろう、おんがくをしゃべろう―』 川崎市アートセンター コラボレーションスペース(川崎/2008年5月) 撮影:三上亮

『もび』の活動と口を開けない酒井幸菜

酒井  いろいろやるようになったのは『もび』※注2に呼んでいただいたのが最初?

西井  そうですね。私が大学院出てすぐの5月で、川崎市アートセンターで子どものイベントがあって、卒業後、初めての作品というかパフォーマンスで、しかもダンサーさんに入ってもらうのも最初でした。私は、ダンサーといえば、幸菜ちゃんしか知らないので、『幸菜さんにお願いします』っていう感じで頼んでね。

酒井  そうだね。その時は私は表現※注3と一緒にやっていたのかな?だからすんなり入れたのかもね。

西井  そうだね。

酒井  うん、絶対そう。じゃないと、あんなにすんなり入って行けなかった。卒制で表現と一緒にやって、表現のメンバーがもびのメンバーにいたから、

西井  そうそう、私からしても幸菜ちゃんは学校の中でも抜きんでて学外で活動していたという印象があったので、けっこうがんばって頼んだ。でも、共通の知り合いもいたから、すっと引き受けてくれて、音楽も半ば同志的な感じで。

酒井  その時参加した印象は、それまで自分で振付けて踊ることが多かったんだけど、もびに参加したことによって、「こういうことをやってほしい」って言われて、それに対して、自分で動きを返さないといけないっていうのが、すごく面白かった。

西井  へえー、よかった!楽しんでくれてたんだ。

酒井  うん、新しい引き出しを開けてもらっている感じがしていて、俳優さんがいたか
ら、その人の擬音語に合わせて動いてくれって、いうのがあったと思うんだ、あれが面白かったですね。

西井  もびの中では、違う道具を持った人を集めて、その道具を交換し合うみたいなことをやっていて、ある意味でみんなをフラットにしていって、その中ででてきた違いみたいなものだけを残していくとか、そういうキャッチボールをできるだけ丁寧にやっていこうっていうのがあって、そこに初めて身体っていうところに特化している人に来てもらって・・・私にとっても挑戦だった。一緒にやっていても、今まで知っていた幸菜ちゃんじゃないみたいな。

酒井  私は持ち道具がそんなに多くないし我が強いから、いろいろあったね。

西井  いろいろお願いしました。とにかく美しく踊る人なので、一番印象的だったのは、口を開けないっていうこと。

酒井  そうそう。

西井  口を閉じて踊るんですよ。顔がいつもきまっていて

酒井  キメ顔(笑)それは言われてから気がついたんですよ。口で呼吸をちゃんとしてなかったんですよね。

西井  そう、顔を真っ赤にしてるんだけど、顔の容は美しくきまってるんです。

酒井  顔をきめてるっていうつもりは全然ないんだけど、

西井  そう、ないんだよね

酒井  今もそうなんですけど、力がぐっと入っちゃうんですよね。最近やっと抜けてきたんだと思うんだけど、やっぱり、私生活にしてもなんにしても、ぐーってなっちゃってて。「幸菜ちゃん口閉じてるよ」って言われたのは、今までいわれたことがなかったから、すごい発見で今大きく役立っているんです。

西井  それはよかった。もうとにかく「幸菜ちゃんのちょっとダサいとこ見たい」みたい
な欲求もありつつ、いい意味ですごいプライドもある人なので、そこもリスペクトしつつ、いい具合で崩れて、表現が混じっていかないかなっていう挑戦でした。私にとっては。

酒井  どこまでできたかはわからないけれど、そのダサい感じとか、キメてない崩れちゃった、さらけ出ちゃうところを見たいんだろうなっていうことはゆっきーのディレクションからも感じていたし、私も気張って踊るっていうよりも、引き出しを開けてもらっていることに対して自分も挑戦しなくちゃっていうのがあって。それができる受け皿がもびにはあるっていうか、「ここで変顔しても、この人達なら大丈夫」っていう安心感というか信頼がありました。それでも頑なに守っている部分はあるんですけどね。

西井  うん、ありましたね。そこに美意識とかも残りつつ、だけどやっぱり俳優の言葉に動かされてもらう作業をして。

酒井  またやってみたい。今やったら違うと思う。変なプライドが消えてると思う。

西井  ぜひ。全然違うだろうね。

※注2 もび: 2005年、こどもの生活する場所にパフォーマンスを届けるため始められた活動。主宰の西井夕紀子が、音楽家、俳優、ダンサー、詩人、美術家らを迎え、学校や文化施設、託児スペースなどに赴く。
※注3 表現:様々な地域、時代の音楽を身体に落とし込み、深い欲求に従ったプリミティヴなポップミュージックを模索するバンド。メンバーの中には、もびの参加者も含む。

Topic-3 『作品をつくる』ということ

 

taidan_nishii急な坂ワークショップVol.9 もび『パフォーマンスにふれる』 急な坂スタジオ(横浜/2011年1月) 撮影:須藤崇規
『作品をつくる』ということ

西井  作品をつくりたくて、私が全部仕切れるわけではないんだけれど、それこそ自分が持っていない道具を出してもらって、一緒に作業することをやりたくて、ぜひ、またお願いします。

酒井 ゆっきーの場合は音楽のひとにしても、何にしても、さっきフラットって言っていたけれど、すごい任せている感じ、でもちゃんと抽出してワークショップの構成にまとめていくっていうのはすごいなって思って見ていました。

西井  ありがとうございます。

酒井 それが私はなかなかできないんです。今もすごい悩んでるんですけど。

西井  私もなんです。任せているのは私もで、主宰しているけどみんなに任せていて、できないことが多いから、すごく。「できない」っていうのが大きくて、キーワードで。自分のイメージ以上のものを、その人から引き出したり、、逆に自分が引き出してもらって『はっ』となることがすごい好きで、なので、また一緒にやりたいです。

酒井 今回の作品は2年ぶりなんだけど、ゆっきーに自分の作品の音楽をお願いしたのは初めてで。

西井  とっても嬉しかったです。涙がでるほど嬉しくて。

酒井 最初の意気込みは、、『構成もしっかり立てて、ここでこういう音楽をお願いしたい!』だったの。お願いするにあたっては、全部丸投げしちゃうと、ぼやっとしちゃうからある程度枠は用意しとかなきゃいけないって思っていて、そうしたんだけど・・・結局ダンサーが初めてご一緒する人たちもいて、顔合わせをしたり、自分で見てはいたつもりだったけれど、実際に作品に落とし込むなると、状況がかわってきて、ずっと構成とかどうまとめていくかって悩んでしまったのね。それで、ゆっきーには一回つくってもらって、稽古も見にきてもらったんだけど、あんまり生産的な話ができず、ぼやーんとしてしまった。でも稽古に来てくれたときに、『なんとなく素材を用意しておくね』っていう風に言ってくれて、すそ野を広げていけるような素材を用意してくれるというようなことで少し可能性がひろがったっていうか。これからシーンがつながっていくんだけれど、それでゆっきーの感じた音とかみえた音っていうのをある意味提案してもらったらいいなっていうのを、ゆるやかに進めようかなって思ってます。

西井  私もそのつもりまんまんになっちゃって、今回大分ミュージシャンに声をかけていて、実は。声をかけたら私も幸菜ちゃんと一緒で「これこれこういうことがしたいからお願いします」みたいな感じで言ったんだけど、そしたらやっぱりミュージシャンから、「本番に向けて進化したい」って、「音を進化させたい」っていうすごい熱い返事があって、「こういうものでレコーディングするから一日だけ来て下さい」みたいなやり方じゃなくて、稽古場も観たいし、会いたいし、どういう動きか知ってから音を出したいって言って。

酒井 あー、それはすごい嬉しい!

西井  だからすごいほっとしていて。私がそうじゃないと音をつくれないタイプで、本番の直前までさわっちゃうんです、何かしら。それで、音響の方とかいらいらしちゃってた。(笑)「完パケはまだですか?」っていらいらさせちゃうんだけど、ダンス自体が本番に向かって一秒たりともたゆまぬ変化を続けて行くものだから、それを見てるとどうしても真剣にやるとそうなってっちゃう。それでまたそれを共有できるミュージシャンと一緒にいれるのは幸せだなと。今回、まだまだこれからなんだけど、とりあえず一緒にやるメンバーは集めたので、楽しみにしていてください。

酒井 ありがとうございます。楽しみ!ほんとに。初めてだったから、ちゃんと話をできないといけないってちょっと気負ってたのね。

西井  そう、それはすごい最初の話し合いで思った。でも、たぶんこれはいま仮説の階段をつくってくれてたんだ。でも、ここじゃないところで最終的に成立するんだなっていう風に思ったし、そうじゃないと私は呼んでもらったのに意味がないと思って。

酒井 最初に渡した構成表とか、あの時話したことが、完成形というわけでは私の中ではもちろんなかったんだけれど、私もいろいろ出てくるのが遅いから、制作的に逆算して間に合わないんじゃないかっていうような焦りがお互いにあるとよくないというか、音楽とか他の部分で思ったりしていたから、ある枠を、そこからはみ出したり崩れたりしていくにしても、何か最初自分の今思っているものを出して、「たたき台」ってやつかな?それは必要だなって思って。それをたたき割って進んでいけたらなと。

西井  わかりました。演奏家はやっぱり演奏する人なので、ダンサーさんたちと一緒で本番ステージに乗ることが誠実な向き合い方としてある人がいて、今回頼んだ人の中にも、「生演奏じゃないんですか?」という話もあったんだけど、今回は録音にした理由とかありますか?

酒井 単純に舞台上にダンサー以外の身体を置きたくなかったっていうのはあって、でももしかしたら見えない所だったら有りかもしれない。客席の後ろからとか。今回、音響さんとも話したいんだけれど、舞台って前から鳴っているっていう印象がどうしても強いので、後ろから鳴っているっていう印象ってつくれないのかなと思って。今回(客席が)L字型だし、音楽に関しては<音の在り処>が視覚的に見えないようにしたくて、空気のように漂っていてほしいなと思っていて、サラウンドじゃないけれど、(前からの)圧力よりも、巻き込まれていくようにできたらいいなって思っていて。

西井  たぶん、相談すればやってくれるんじゃないかな。(※この後の打合せで、音響の星のさんが、笑顔で『なんとかします。』とおっしゃってくださいました!)

酒井 全然音響的なテクニカルはよくわからないけれど。

Topic-4 『幸菜ちゃん大好き!』と『場所の亡霊』

 

taidan_nishii『In her,F major』 LIFT(東京/2010年10月) 撮影:相川健一
『幸菜ちゃん大好き!』と『場所の亡霊』

酒井 ゆっきーに今回お願いしますってお話をして、ご快諾いただいたときに「幸菜ちゃんの好きな映画とか影響を受けた映画を教えてください」って言われて、それで私、何を書いたか…タルコフスキーの『ノスタルジア』と『ポーラX』と…

西井  なんかいっぱい、日本の人もあった。『悪人』とか。

酒井 そう、いっぱい挙げて、観てなくても全然いいんだけれどどうだったかを、その意図と意味を教えてほしいなと。

西井  幸菜ちゃんの作品としては、ポジショニングの話なんですけど、フレームの中を構成するようなイメージが強くて。映画にすごい影響をうけてそうだなという印象があったので聞いてみたんです。

酒井 ずばりです。

西井  ずばりそんな感じです。それで、ツタヤに探しに行ったんだけど、どれもなくて。

酒井 え、本当?

西井  うちの近くのツタヤだったからかもしれないけどすごい悲しい結果でした。すみません、ちゃんと見れてなくて。

酒井 それじゃあ、私が史上最高に好き美しいと思っている『ノスタルジア』は今度貸します。

西井  貸して下さい!それだけは観たいとおもっていて。なんとか。お願いします。

酒井 フレーミングはそうだね。

西井  それは幸菜ちゃんが自分で踊っているときの印象とは違って、作品ていうのと踊るっていうのは私の中で分かれていて、幸菜ちゃんは。

酒井 すごい!私より私のことをわかってる!

西井  だって大好きだもん(笑)幸菜ちゃんが踊る時は、幸菜ちゃんは「場所の亡霊」になるっていうイメージがすごいあって、どんな会場でも、その場所の全部を、後ろも下も上も全部目を持っていて、それを一身に受けてばって身体で出て行くから、そこにいる地縛霊だって勝手にイメージがあって、踊るときには。同じ踊るでも、二つの幸菜ちゃんの居方があるなって、だから自分で作った作品に出るっていうのはまたちょっと特別なものがあるなって思ってます。

酒井 いまの、的確、明確。自分が踊る時とつくる時は違うし、場所の亡霊って言われてもそうだなとは思った。作品をつくるときはフレーミングだったり配置っていうのはすごく大事で、今回ももちろん肉体的な部分にも触れるんだけれど、あの武骨な空間にどう配置していくと色気が出るのかとかいうのは考えてますね。

Topic-5 『今回の作品の見所は?』

 

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