タタタ対談「岩渕貞太×石橋源士」その1

横浜の劇場・稽古場3館による創作支援プログラム「坂あがりスカラシップ2008」の対象公演として選出された、岩渕貞太・新作ソロ『タタタ』。
本番をまもなくに控えた稽古場より、初のソロダンス公演に挑む心境や意気込みについて、トークゲストでもあるドラマトゥルクの石橋源士氏に迫って頂きました。
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|公演情報|その2「『よろこぶ身体』というもの」|その3「カンパニー作品を作ってみたい」| (構成・テキスト:坂あがりスカラシップ事務局) |
振付の強さを追求したい
石橋 今回は自主公演でもありながら、「坂あがりスカラシップ」という枠組の中でもあると思うんですけど、応募した理由はあるんですか?
岩渕 もともと来年度にソロの作品を作ろうと思っていたんです。その公演をする場所も考えなければと思っていたところにこの募集があって、稽古場と劇場の確保ができるとかいろいろな条件がある中でできるということがあって。スケジュール的にはかなり時間のない中で創作しなければならないということはあったのですが、来年度に向けてのステップを踏んでしまいたいと思ったんです。ちょうどいろんな考えが一時期に重なって、応募してみたら運良くやらせていただける機会をいただきました。
石橋 今回は何で2バージョンあるの?
岩渕 今までに自分が体験してきたカンパニーでは、振付というものはまずダンサーを見てその人から生まれてくるものを作品とすることが多くて、その面白さをずっと感じていたんですけど、振付が先に存在して、誰が踊ってもどんな風にしても魅力が出てくるような振付の強さを追求したいと思っています。海外だと他のカンパニーに作品を渡すということがあるんですよ。
石橋 それはあまり日本ではないの?
岩渕 全くないというわけではないんだけど、コンテンポラリーダンスではあまりこういう話は聞かないですね。だから自分の作品を誰かに渡すことができたらもっと面白いのにな、と思ったんです。
石橋 今回の振付というのは誰かダンサーありきではなくて、振付だけで独立しているような作品でありたい、という希望もあるということ?
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石橋 ということは、例えば今回の場合だと貞太君はたまたま男性で酒井さんはたまたま女性ですけど、それが性別だけではなくアジア人だろうが黒人だろうがヨーロッパ人だろうが、同じく通用するような振付でありたいということですね。しかもそれだけではなくて、違うダンサーが同じ振付の作品を同じ日に前後してやるということは、厳密に振り付けられていたとしてもロボットが踊るわけではないから何かしらの違いが出てくる。でもこれはある意味では実験で、やってみないとわからないと思うけれど、今やる前の気持ちとしてどんな違いがあると予想していますか?
岩渕 自分にとっていい状態の肉体というのは適度に重さがあって、柔らかくて、何というか上質の「お肉」みたいな感じなのですが、酒井さんの身体を見たときに「お肉」の感覚ではなかったんですね。その中でそこ(自分の身体)を出発点にした振付がどう違うアプローチに見えてくるのかが楽しみです。女性だから質感が違うということではなくて、形(振付)が一緒なのに質感が全く別の素材になっていくことで、どう見えてくるのか。かなり未知数なところがあるのですが、ちょっとした時間の流れ方だとか身体の分節の仕方だとかそういった違うところを、どう自分が解釈して、どこでオッケーを出して、どこを自分の振付のオリジナルと合わせていくのかという作業が肝なのかもしれませんね。
石橋 振付は貞太君自身のも酒井さんのも同じものだと思うんだけど、演出の場合は酒井さんには貞太君自身を演出するものと違った演出をすることになりそうだよね?
岩渕 そうですね。空間とか音楽が違うといった話ではないとは思うんだけど、僕と同じ身体を求めようということを考えているわけではないです。振付までは一緒なんですが・・・。
石橋 身体が持っている質感がまず違って、今後もし同じ「タタタ」という振付を別のダンサーがやるとしたら、同じ男性でももっといろんな肉体を持っているわけですし、女性だってそうですよね。それは振付が一緒でも違いますよね。演出というのは解釈なわけで、持っている素材とか制約されているものに対して、そこにどのように指示を与えていくかということだと思うんです。そこで演出がどの程度変わってくるのかが僕としては楽しみなんです。
岩渕 今聞いて、何となくボヤボヤしていた違いというのが明確になってきた気がします(笑)。
石橋 この公演の情報を見て、面白さのポイントはまずそこにあると思うんですよ。見に来たお客さんが「じゃあ違う演目の方がいいな」って言いかねないところを、パフォーマーが違うというところから差異が浮かび上がってきたときに、なぜあえて同じものを重ねて上演するのかという力強い意義がこの試みに出てくる気がするんです。そこは企画意図としてわかりやすい見所だとは思うけれど、これからリハーサルを重ねていく中で何かその意図とは違う別の見所が出てくるのかもしれないよね? 今はまだ思考段階中だろうから想像できないけど。
| |『タタタ』公演情報|その2|その3| |

