「坂あがりスカラシップ2011」対象者決定のお知らせ

この度は「坂あがりスカラシップ2011」にご応募いただき、誠にありがとうございました。

厳正なる審議を行った結果、昨年度より継続支援として藤田貴大氏、本年度より木ノ下裕一氏、白神ももこ氏が選出されました。

Takahiro Fujita

撮影:飯田浩一

藤田貴大(マームとジプシー主宰・劇作家・演出家)

1985年生まれ北海道伊達市出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻。
2007年マームとジプシーを旗揚げ。以降全作品の作・演出を担当し、横浜を中心に演劇作品を発表。象徴するシーンのリフレインを別の角度から見せる映画的手法が特徴。また、役者が本来持つパーソナリティーや役者自身の質感を作品に大きく反映させ、舞台上で生まれるリアルなドラマを作品に組み込んでいる。2010年6月坂あがりスカラシップ2010対象者として選抜される。

「またまたスカラシップ、ららら、歌いながら、スカラシップ、に、プリプリ、挑むよ、マームとジプシーは。あはは。」
相変わらずに、どんどんと、挑ませてくれる人たちが、いる。坂を登ったところ、急な坂スタジオ、には。
いつも、つくっていて、何が、どんなカタチで産まれるかはわからないんだけど。
だからいつも、産まれるモノを待っている時、わくわくしてるんだけど。
坂を登ったところ、急な坂スタジオ、で、出産を待つのは、格別だよね。
まずは、産まれたてのモノを見に、産まれたての土地に、来てほしい。
来てくれたら、交感したいのよ。
僕が、この土地と、ここの人たちと、立派な交尾、して産んだモノを通して。

鮮やかな交感がしたいんですよねー。お楽しみに。

Yuichi Kinoshita

木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰・演出家)

1985年生まれ。京都造形芸術大学大学院 芸術研究科芸術専攻(博士課程)在籍。
小学校3 年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時にその日から独学で落語を始める。古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学び、古典作品上演の演出や監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を立ち上げる。木ノ下歌舞伎では『四・谷・怪・談』(06 年10 月・作:鶴屋南北)、また「菅専助-見知らぬ作家-」として『摂州合邦辻』(08 年12 月)、『桂川連理柵』(09 年6 月)、『伊達娘恋緋鹿子』(09 年10 月)を演出し、本作品はF/T09 秋「演劇/大学 09 秋」でも再演され話題を呼んだ。最近の演出作品に『俊寛』(10 年10 月・作:近松門左衛門)がある。また、古典芸能に関する執筆、講座なども精力的に行っている。

「〈場〉を創るということ。」
横浜に向かって歩いている時は、いつも息が上がる―。
それは、〈今一番逢いたいひと〉に逢える、そんな高揚感が、足取りを早くしているからだと思う。
〈今一番逢いたいひと〉とは、一緒に作品を作っている人たちだ。そこには、座組みに加わっているかどうかなんていう陳腐な線引きはない。ふとした拍子に、思いがけずヒントをくれる方、それは、稽古場の廊下でほんの少し立ち話をした他団体の方だったりもする。つまり、今創っている作品が一番逢いたがっている人たち、そんな方たちとの出逢いが横浜という〈場〉では不思議と起こる。いや何の不思議もないのかもしれない。そのような〈場〉を創造し、整備されている方々が横浜にはおられるのだから―。
舞台創作の地平で古典の現代化を考えてみることで、伝統演劇と現代演劇の双方を相乗的に活性化させたい。それも、私一人の枠の中ではなく、輪を広げていきながら、多くの方と一緒に行いたい。作り上げた作品にとって関わったアーティストやスタッフの存在が必要不可欠だったように、関わった人たちの〈これから〉にとっても、この作品が必要だったと思っていただけたらどんなに幸福だろう。私も、そして自身が主宰する木ノ下歌舞伎も、そんな舞台創造の〈場〉になりたいと一貫して活動してきた。
今回、このような形で、横浜という〈場〉との縁をいただいたのは、幸福であると同時に、私自身が試されているのだと強く感じる。恵まれた場の中に、どのような新しい〈場〉を展開させていくことができるか。
舞台を作るということは〈場〉を創ることに他ならないのだから―。

Momoko Shirga

白神ももこ(振付家・演出家・ダンサー)

1982年生まれ、東京都出身。桜美林大学卒業。
幼いころよりバレエを始めるが、とくにぱっとしないまま今に至る。
2005年、ダンス・パフォーマンス的グループ モモンガ・コンプレックスを旗揚げ。これまでの全作品の振付・演出を担当している。
このほか、ままごと「わが星」をはじめとする演劇作品への振付提供や、音楽ライブへダンサーとして出演する等、活動は多岐に渡る。近年は岡崎藝術座の神里雄大氏とのユニット鰰[hatahata] としても活動している。
現在、演劇情報誌シアターガイドにて「憧れなんて、無責任なものだわよ。」連載中。

最近は、何を考えているかとか、何を想っているかより先に劇場がきまり、後から作品について徐々に考える、みたいな流れになっていて、劇場や場所を単なる箱かステータスで見ているように感じていました。
人間のほとんどは水でできていて、環境に合わせて形を変えることができるから、私の作品も場所の持つ空気とか土で大分もっている匂いみたいなものが変わると思っています。だから、逆に作りたい作品の匂いに合わせて創作の場を変えたって良いし、本来はそうだよなってことで、自由で、わりと適当で、いろんな人たちが行き交うこの横浜で創作できることを楽しみに思います。

お三方には、急な坂スタジオ・のげシャーレ・STスポットによる制作支援のもと、作品発表を行っていただく予定です。

今後も我々は、「坂あがりスカラシップ」の発展的な継続、そして創造・育成に重点をおいた拠点として、創造の担い手への支援に努めて参ります。今年度のスカラシップ対象公演にご期待下さい。

坂あがりスカラシップ事務局