急な坂スタジオQ(きゅう)連続トーク まとめ

2014年9月28日

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Q連続トーク まとめ

橋本清さん(坂あがりスカラシップ対象者)をホストに、5月から8月まで行われたQ(きゅう)連続トーク。
怒濤の9回を終えた参加者のみなさんに、改めて今回の稽古場見学で
感じたことを文章にしていただきました。
ホストの橋本さん自身も含め、みなさんはそれぞれ、何を見て・何を感じたのでしょうか?

橋本清

先日、『河童が覗いた50人の仕事場』(朝日新聞社)という本に出会いました。
舞台美術家であり小説家でもある妹尾河童さんの著作で、さまざまな《職場》に彼が出向き、各分野で活躍する人々の《舞台裏》を自作のイラストともに紹介するという内容。演劇関連で言えば、井上ひさしの《書斎》、佐藤信の《作業場》、蜷川幸雄の《スタジオ》などが取り上げられていました。――僕が生まれる二年前、今から三十年程前に出版されたものです。

今年の五月上旬から約二ヶ月間。僕もまた、いろいろな方々の《仕事場》に接する機会がありました。
妹尾さんに覗かれた《現場》は千差万別でしたが、こちらは覗く方も多種多様。演出家や劇作家、劇団の制作を担当する人もいれば、映像を勉強している人などなど……公募であつまった方たちと一緒に、急な坂スタジオでクリエーションを行っているアーティストたちの《稽古場》にお邪魔してきました。

どこも刺激的でしたが、岩渕貞太さん(ダンサー・振付家)の《稽古場》が個人的に特に印象に残っています。
具体的な公演ではなく、今、岩渕さんが興味のあることをつぎつぎと試していて、ゆっくりと時間をかけながらアイディアと向き合う岩渕さんを会場の隅の方で見ていると、《振》という一文字が浮かびました。行きつ戻りつつ、立ち止まりながら進んでゆくことで――岩渕さんの場合は《ゆらゆら動きつづける》方がしっくりきますが――それがいずれ《振り子》のようにある周期をもったもの――創作のためのそれぞれの手法みたいなものになっていき、作品が生み出される。《稽古》というものの本質的な部分を改めて感じられました。
各回の《現場》のことを書いていくと膨大な量になってしまうので、僕の感想はこの辺で割愛させて頂きますが、残りの参加者がそれぞれ覗いたもの――受け取ったものをレポートとしてまとめてもらったので、そちらを是非ご覧ください。

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カキヤフミオ

以前、ある演出家の方が、「演劇を観るということは、本番を観る前にすでに始まっていて、本番が終わってもさらに続いていく」とおっしゃっていたのを耳にし、あっ、そんな考え方もあるのかって、わくわくしてしまいました。が、これから観に行く作品に深く向き合えればと、関連した書物などを手にとってみたりするものの、演劇を観始めたという実感までにはなかなかたどりつけなかったことが、今回参加を決めた訳です。

実際に、アーティストのみなさんの創作過程を目の前にし、圧倒されっぱなしでした。妥協をゆるさず追求されるユニークネス。演出家と俳優の信頼関係の強さ。空間を読み解く、複数の線と溜められたエネルギー。言語表現でないパフォーマンスの訴求力。ことばを観客に委ねることで、観客との距離が飛躍的に近くなる。観る人に寄り添うことを念頭におくアーティスト。観ている側も、もっともっと作品に寄り添いたくなりました。

稽古見学後のトークでの質疑応答、他の方たちの視点にも気づかされることが多く、とても刺激的でした。帰り道、坂を下りながら、あらためて感想などを言い合ったり。そのがやがや話がほんと楽しくて。本番を観る以外にも、こんな時間がすごせるんだなあって。演劇というものが、「人生に出会い、そして考えるものであり、いまここにあることを他者とともに楽しむことである」ならば、今しみじみ、その素晴らしさが感じられます。

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木村和博

自分が近いと感じた稽古場はないのかもしれません。しかし、どのアーティストの稽古場に行っても、もっと見ていたい、知りたい、話してみたい、そういう意味で近付きたいと思うことはありました。

日常の動きって複雑、4つ5つ以上のことが起こっているのに、舞台にあげようとするとシンプルになりがち、身体に移すことが難しい。 日常の動きのグラデーションの部分をどうやって上げるか。 身体の矢印を増やす。 矢印の強度を変化させる。 架空の中心を作る。 2、3カ所同時に動かす。 動きに動機、目的を持たせて変化させる。 スイミー、100匹でシンプルな動きをすることもできる。 先頭が変わる。 線の力。 ねじれの力。 力の逃がす方向。 身体がアースする/しない。 支点。 見えないものに責任をとらせる。

上記は私が岩渕貞太さんの定例稽古を見ている最終にメモしたことの一部です。魅力的な身体を模索する方法をしなやかな発想で地道に積み重ねていく岩渕さんの稽古場は、とても魅力的でした。

岩渕さんの定例稽古を見て身体を通して「生活」との付き合い方を模索できるのではないかと思いました。私にとって『生活』とは、具体的なもので、逃れられないもので、朝起きて、トイレに行き、水を飲み、ご飯を食べ、服を着て、ごみを捨て、歩き、仕事をして、電車に乗り、シャワーを浴び、寝る、これまでもこれからも一緒にいるものなのだと思っています。「生活」で身体はあまり意識されず使われていています。その身体を知ろうとすることが、身体に蓄積された「生活」を知ることが、常に一緒にいる「生活」と付き合っていくことを豊かにしていくような気がします。

今回は、岩渕さんの稽古場のことしか書けませんでしたが、Q連続トークでたくさんの栄養を貰えたので、このまま終わりにせず、感じたことを地道に育てていきたいと思います。貴重な機会を作って頂まして誠にありがとうございました。

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小西楓

この企画に参加した当初は、稽古場に対して持っていた印象が「作品が生み出される場所」という漠然としたものだったのですが、様々な稽古場を見学して感じたのは、外に向かって生み出そうとする力があるのと同時に、自分自身の中に深く潜り込み、時にはじっと待ち続けるような求心力の強さでした。「外に向かっていく力と内に向かっていく力」このふたつの力の重心はどこにあるのだろうと考えているうちに、舞台に立っている人々の身体もその力の重心に強く関係しているのではないかと感じました。身体というフィルターを通して外から内へ、内から外へ通り抜けるものや、通り抜けることができずに空中を彷徨い続けている得体の知れないものについても考えたりしていました。そうして身体について考えながら稽古場を見学させて頂くうちに、漂い続ける空気と身体との衝突や、身体に纏わりつきながら流れていく空気の表情などを以前より強く感じ意識を向けるようになりました。

外と内を隔てる身体の存在に縛られていたかと思えば、1秒後にはそれを軽く飛び越えていたりする。それぞれの稽古場で出会った身体はどこまでも頑でいてどこまでも柔らかいものでした。

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中藤奨

今回、この企画に応募したきっかけは、柴幸男さんや藤田貴大さんなど、戯曲や映像でその作品を見知っている方の名前があったからで、申し込みをした段階ではまだ上京もしておらず、ただただ興味と時間がある、という動機だった。一口に稽古場見学といっても演劇、ダンス、歌舞伎の勉強会と様々。その時期によっても、創作前の段階、稽古初日から本番前最後の稽古、とそれぞれ空気感も変わってくる。共通点としては急な坂スタジオで稽古をしている、という点であり、スタジオ自体への思い、周辺環境やプロデュースについて、などの話も聞けたのは興味深かった。

僕自身は劇作、将来的には演出もしたい、という目的があり、その部分での何かしらの影響を期待していたのだが、特に興味を惹かれたのは身体表現についてだった。岩渕貞太さん、酒井幸菜さんのようなダンスの創作過程の場では勿論だが、岡田利規さん始め、演出家の方も身体には特に注力しておられ、自然と興味が移る。また、それを伝える為の言葉に関しても、どの方もそれぞれ強度のある言葉を持っておられ、それぞれの方の経験から生まれたであろう言葉やこだわり、創作に関わる上での持論、そういった所に感銘を受けた。

影響を受け、作品にする上での言葉、身体。それを支える場所、環境がまた作品に影響を与えている。という健康的な循環を目にして、それが目に見えて感ぜられた最終日のBBQ、羨ましくも、素敵な場所だと、心から思った。

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